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きっかけは映画館
第8章 食事
「へいお待ち〜魚の切腹、こちらから、鯛、鮪、鮃、鱸、鰤、鯵…」
なんかシュンとした空気の中、魚の切腹が運ばれてきた。
10種類のお刺身が氷を張った桶に大葉で分けられて乗っている。
二切れずつ綺麗に盛りだくさん。
「わぁ、美味しそう。」
「お客様、お酒どうされます?
料理にあったワインの赤白を利き酒程度に一緒にお持ちして、お気に召されたらデキャンタでお持ちするってセットメニューもありますが。」
「じゃあそれで…」
「じゃあ切腹に合わせたワインをすぐお持ちしますね。」
すぐに、冷酒用のガラスお猪口のような手頃なサイズのグラスに入った赤と白のワインが運ばれた。
小洒落た小盆に、銘柄と味わいの説明の書かれた可愛いプレートが添えられて…
肘男が白のグラスを取り、掲げる。
私も同じグラスを取って、「乾杯」と言って合わせた。
少ししょんぼりした肘男が可哀想になって、理由など言わずに乾杯した。
キョトンとしたあと、嬉しそうにする肘男を不覚にも可愛いとか思ってしまった。