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きっかけは映画館
第39章 おフランス
朝から雨だった。梅雨も明けたというのに梅雨を思わせるようなしとしと降る雨。
気分が沈みそうだったけど、ベランダの紫陽花が目に入った。
雨露を纏ってキラキラ輝いている姿に元気をもらい出社する。
午前中にヒジオから到着のメールをもらう。
空港から休憩もなしに立花女史の待つ市場に直行するようだ。
【頑張ってね、よろしくお願いいたします。】
メッセージを返すと共に自分にも気合いを入れた。
到着したのだろう。2時間もせずに、成約の通知メールが入ってくる。その後も1時間に2〜3件のペースでメールが入る。
それを部長に報告しては、優希ちゃんチームに流し、レイアウトを踏まえた組み合わせがあがるとカレンダーを埋めていった。
時差があるためメールは終業後にも届く、ヒジオも休まず働いていると思えば苦でなかった。
部長や残れるメンバーも一緒になって動いてくれる。
オープンまであと僅か、正念場だった。
「そろそろ、電車もなくなるし帰ろう。」
部長の声かけで皆で事務室を出た。
ヒジオにお任せにして、二店舗共同での契約や、もしエントリーしても一年しか店舗を出せないなどの条件付きの契約も出てきた。
小規模で店舗を構えているパティスリーにはやむを得ないことだと思う。
その辺の采配をうちに不利にならないようにヒジオが進めてくれて、契約がどんどん成立していった。