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きっかけは映画館
第39章 おフランス
「商談成約おめでとう〜」
「初海外出張お疲れ様でした〜」
二人で料理してカウンターキッチンに並んで乾杯した。
食事をしながら今回の出張の話をする。
とはいっても、自由な時間などなかったから、ほとんど市場の様子と商談のエピソードだけだったが…
「ねぇ、ヒサオ…
今度ダイニングテーブルを用意しようよ、うちのを持ってきてもいいし…」
「ん?何で?」
「向かい合って顔を合わせて食事したい。」
「並んでたら、こうやってくっつけるよ?」
俺は麻里絵ちゃんの肩を抱いて頬にチュッとキスをする。
「そうだけど…夕飯は向かい合って顔を見て話をしながらゆっくり食べたいから。」
「まあ、一人だとテーブル要らないし、家で食べることもなかったし。」
「でも、子供とか増えたら足りなくなるし。きちんと向かい合って食事したほうが…」
「子供……俺と麻里絵の…?」
「そのうち…そのうちね。」
麻里絵ちゃんが真っ赤な顔で答える。めっちゃ可愛い。きちんと考えてくれてるんだ。
うん、俺ももっと具体的に考えよう。
「じゃあ買おうか。」
「うちにあるのがもったいないから、崩せば運べないかな…」
「うん、今度見に行ってみよう。」
「来週末?」
「いや、麻里絵、来週末は伊豆に行くよ。
フェアオープン前に泊まり掛けでいこう。」
「忙しいんじゃない?」
「いや、必ず行こう。」