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きっかけは映画館
第39章 おフランス
俺が居なくて寂しくて寝ちゃったなんて可愛いことを言う麻里絵ちゃん。
俺もちゃん付けから卒業しなきゃな…と思いながら、麻里絵ちゃんの背中を支えて起こす。
「サンプル的にいくつかスイーツを買ってきたんだ。
会社には正式なのがクール便で届くけど、
食後にいくつか食べてみる?」
麻里絵ちゃんの目が輝いている。
「優希ちゃんに恨まれちゃいそう。」
言いながらも俺の腕に絡みついてきて嬉しそうだ。
すぐさま支度してショッピングモールに出かける。
『ステーキにワインにして、そのままスイーツのお味見をしよう。』
なんてスキップしそうな足取りで言われたら、俺は麻里絵ちゃんが味見したいって思っちゃうが我慢我慢。
ほんのちょっと離れただけなのに、こんなに寂しがられて嬉しくて堪らなかった。
庇うように背中に手を回して買い物に行く。オープンまで後1週間、その前の週末は麻里絵ちゃんの誕生日。
またバイクで泊まりがけで出掛けて、そこでの為にフランスであるものを買ってきた。
麻里絵ちゃんにはまだ内緒、しかし、一緒にいてぐいぐい押すばかりが出来ることと頑張ってきたのに、離れている時間が想いを育てるなんて歌詞みたいだ。
でも一緒にいなきゃダメだ。というより俺が一緒にいたい。
食品売場を歩きながらニヤニヤおかしな俺に気づかず麻里絵ちゃんは食材を手に取って吟味してはカゴに入れていた。