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きっかけは映画館
第40章 日の出
ヒサオは二週連続休みがないまま晃くんのところとの打ち合わせに挑む。
そして私と優希ちゃんは、ベルギーチョコの専属契約を結んでいた××物産の温厚な商社マンと交渉していた。
「すみませんね、担当の私がよくわかっていなくって。」
「いいえ、私どももよくわからず、△△商事に交渉を依頼して、現地で初めて知らされたのです。」
ヒサオの会社の名前を出した私に隣で優希ちゃんがビクリとする。
でもフェアが始まれば△△商事との協賛を謳うことは明らかで、隠して交渉など出来ないと考え、ヒサオの会社の名前を前面に出した。
「ああ、スイーツ部門の立花くんかな?彼女はやり手だからね。
しかし、だいぶ前に結んだこの契約の前には立ち回れなかっただろう。」
彼はそう言って、ベルギーチョコの会社と取り交わした契約書と××物産とうちが交わす契約書をテーブルの上に出した。
メーカーとの契約書は立花女史がメーカーから入手していて目を通してある。
うちが交わすべき契約書に目を通す。
専属契約としているために手数料のレートが割高なこと、イベント開催、店舗出店の際には、メーカーと××物産が協賛であることを明示することが特出している。
しかし、ベルギーチョコは知名度が上がっているにも関わらず、老舗中の老舗のこのメーカーが知られていないのは、この契約に阻まれ広まっていないからだろう。
「この契約書を持ち帰って社で検討したいのですが。」
「生憎、それも禁じられていてね。契約するなら責任者同伴でこちらにご足労頂きたい。」