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きっかけは映画館
第10章 週末
家に着いてシャワーを浴びる。映画のラブシーンを思い出す。
ストーリーがわからないから、ヒジオがあんなことしてくるから、そのシーンの映像だけが色濃く記憶に残っていた。
はあぁ…
何故か深いため息が出て風呂を出る。
冷えた水を飲んで酔いを醒ました。
スマホが点滅しているのに気付きチェックすれば、ヒジオからのメッセージ。
【映画館では本当にごめんなさい。
でも料理は美味しかったし麻里絵ちゃんと話せて楽しかった。
遅くなっちゃったから心配で、無事ついたかな?
それだけが心配だから返信ください。】
わりと簡潔な文章、本当に心配してくれているんだと伝わる。
既読がつくから安否確認できるじゃん。
そう思ったけど…
ヒジオがしつこくメッセージを送ってくるような気もして返事した。
【無事つきました。おやすみなさい。】
ピローン…
【良かった。安心して眠れる。おやすみなさい。】
これは既読マークでいいかな。
電源を落としてベッドに入った。
入った…
お酒のせいか…
あえて話題を避けたからか…
ラブシーンの映像が瞼に浮かび、ヒジオの色っぽい横顔と、いやらしい仕草と感触が右手と太ももに甦る。
あの長ったらしい名前の店でのヒジオと、映画館でのヒジオのギャップに、
あの色っぽいヒジオは、どんな男なんだろうと妄想した。
それがラブシーンでの男優の映像に重なり、もしヒジオと肌を合わせたら…と、
いやいや、ヒジオは………
私にとっては、ただの痴漢でしょ?
ギュッと目を閉じて布団を被った。