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きっかけは映画館
第11章 仕事


「先輩、映画、見に行きました?」

優希ちゃんは、私がお誘いしたことをちゃんと覚えていて尋ねてくる。
見ていれば一緒に共感トークができるところだが、ラブシーンしか浮かばない。

「上映時間に間に合わなくて、先週は諦めたの。今週行くつもりよ。」

「先週、頑張って仕事して行ったのに…
今週是非見に行って来週お話ししましょうね。」

さてさて、ヒジオと…か、どうかはともかく、優希ちゃんの為に、また見に行かなければならなくなってしまった。

また仕事を頑張らなきゃ。

私の仕事はデパートの企画部、テナントの采配から、季節ごとのセールスに向けての企画、コンセプトやテーマ、掲示物やテナントのシーズンの目玉商品のチェックなど、ありとあらゆる企画に携わっている。

そして、裕司についていけないという結論に至った原因でもある大きな仕事とは、3ヶ月先の秋のオータムフェアに合わせた催事場で、何のどういった企画、販売をするのか、その土台の企画を優希ちゃんと二人に任されたのである。


とは言っても、例年の傾向があり、食品、服飾など販売の対象を決め、皆で案を持ち寄り絞っていく。

いわば、皆の取り纏め、司会進行役のようなものだ。

部長からの若者の斬新なアイデアに期待したいとの一声で、新人の優希ちゃんと私が抜擢された。

それが、私達に振られたのが3ヶ月前、つまり半年掛けて決めていくのだが、先取りなんて難しいもので、『近くならなきゃわからない。』という優希ちゃんのごもっともな意見の下、この3ヶ月は国内外の目新しいもの探しに留まった。

それでも準備期間の半分を過ぎて何も決まっていないのには、少し焦っている。

催事場の催しは四半期に分けていて、オータムフェアは8〜10月の3ヶ月間。
そこを通しでするのか同じテーマで趣向や商品、地域を月替わりでするのかも含めて企画するのである。

ちなみに去年は食欲の秋として九州物産展を県ごとに展開してリレーした。
8月から秋と先取りするように、その季節のものでは遅いのである。





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