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きっかけは映画館
第11章 仕事
明後日以降に決まる訪問に向けてもっと煮詰めなければならない。
商社との商談は本来企画が決まってからの行程なのに、企画を決めるために訪問するのは少し無理があるのだ。
地下の惣菜の残り物を社員価格で購入し、電車に揺られて帰宅。
ここのところこんなことが毎日だから、少し疲れている。
なのに、何で裕司についていけないと返事したのか…
いや、やはり仕事は面白いし、優希ちゃんの成長も見ていける。
裕司と私は、お互いに癒しを求めたり、甘えたりが苦手だったのだ。
翌日も訪問、商談に向けて優希ちゃんと話し合い煮詰めていく。
優希ちゃんは優秀で行動力がある。
下調べの必要性や商談の経験がないから、ざっくりした決裁文書になってしまっただけで、しっかりとした根拠があって地域も商品ジャンルも選択していたのだ。
そして部長も、本来なら企画書を元に、交渉部が行う商談を、まだ決まっていない段階で行うことに、『これぞ若者の斬新な発想力だ。』と表現して、交渉部への日程調整にも圧力を掛けた。
よって、××物産は翌水曜日、△△商事には、翌木曜日と今週の訪問が決定してしまったのである。
はぁあ…今日も残業かぁ…
優希ちゃんはどうやら同棲しているらしく、彼氏が帰るまでに帰って食事の支度をするため残業は出来ないということがわかってきた。
それをとやかく言うことはしない。
その分、ひとりでしか出来ない仕事を残業にシフトし、優希ちゃんとの仕事を日中進めるという方法でやりくりした。