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きっかけは映画館
第13章 金曜日


「ヒジオ、いい席取れたじゃない。」

通路を挟んだ真ん中の最前列で段差があり、前に人もいないし、視界もクリアだ。

「だって、今日買ったんじゃないし…」

「えっ…?」

「だから、今日買ったんじゃなくて、先週あの晩にネット予約したから…」

「え…そうなの?ありがとーヒジオ…」

「うん…お詫びだからね。ゆったり座れてじっくり見れる所をと…」

「うん、じゃあ早く座ろ?」

麻里絵ちゃんは席の位置でご機嫌に戻ったみたいだ。



しかし先週この席を取ってから1週間、忙しかった。

火曜日に麻里絵ちゃんとこの、
勿論、その時はそうとは知らなかったけど、麻里絵ちゃんとこのデパートから、急に商談申込みが来て、
スイーツ部門が指名されているという他は何も聞かされてなくて、
どうやら企画自体が交渉次第で、白紙に近いと知らされて、
女性二人の担当だけの来訪に、立花女史は舐められているとお冠だし、
正味2日ないタイトなスケジュールで、手掛けた仕事をそっちのけで準備した。

麻里絵ちゃんとこのデパートが、今までどんな催事場企画をしているか、うちとタイアップした時、どんな商品を出したか等…


そして、漸くある程度常識的な時間に麻里絵ちゃんに連絡出来たのが水曜日。


日曜日まではしつこいかなと遠慮していたけど、水曜日までは忙しくて連絡出来なかった。

麻里絵ちゃんも近くで飲んでるらしく、一目会って癒されたいと思ったのに、あっさり断られた。

やっぱり、金曜日まで会えないのかと落ち込んで、もしかしたら、金曜日もすっぽかされるかと不安だった。





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