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きっかけは映画館
第13章 金曜日
それなのに、応接室から漏れる声に、後輩の優希ちゃんを励ます声に聞き覚えがあって、扉を開ければ、まさかの麻里絵ちゃんだった。
あの時、拒否られた名刺交換をまさかの業務内で行い、名刺には…
【間宮 麻里絵】
俺も言えないけど名字と名前の始まりが同じでどことなく韻を踏んでる名前に親近感を持った。
俺との初対面を装う麻里絵ちゃんに、俺も紳士に応対した。
はぁ〜、隣の立花女史は仕事の鬼みたいな女性だが、キリッとしてる麻里絵ちゃんは、真面目だけどやっぱり可愛くて、
後輩を連れている気負いが感じられて、早く楽にしてあげたくて、立花女史を下がらせ、後輩ちゃんのサポートにあたった。
麻里絵ちゃんが苦労しているのが想像できる。
優希ちゃんは優秀なんだろうけど、奇抜で物怖じしない。
慣れてきたら友達感覚で話してくるから、俺も合わせて名前で呼んだりした。
無事商談は終わったが、どことなく麻里絵ちゃんが不機嫌だった。
俺に職場を知られたのが嫌だったか、優希ちゃんと勝手に話を進めたからか…
帰りも遅かったし、多分前日も優希ちゃんと飲んでて、今日も近くで飲むんじゃないかと連絡したけど、案の定不機嫌なままで、とりつく島もなかった。
このまま会えないのでは?映画もすっぽかれちゃうのかな…
帰宅時間を狙って連絡しても、素っ気ない感じだった。
でも、商談で会った時に思った。
やっぱり俺、本気で麻里絵ちゃんが好きだって…
だから、真剣にお付き合いして欲しいって改めて思ったんだ。
期待半分、不安半分で映画館で待ち続けて、麻里絵ちゃんがチケット売場に現れた時は思わず嬉しくて大声で呼んじゃった。
麻里絵ちゃんは益々不機嫌になったけど…
でも席を見て機嫌直してくれて、1週間頑張ってきて良かったって思えた。