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きっかけは映画館
第13章 金曜日
寝室らしきところに行き、ビリビリと音がして、
「これ、ヒジオには小さいかなぁ。」
たぶんしまい込んでいた元彼のスウェットらしきものを持ってきた。
はぁあ…
内心凄く凹んだけど、麻里絵ちゃんは、やっぱりどこかおかしくて…
きっと、素面でそんなことするはずないと思い、受け取ってバスルームを借りる。
麻里絵ちゃんはぼぉ〜と寝室に入っていったので、大丈夫だと思った。
くそ…これ、一回鎮めとくか…
これ以上何かあったら抑えられる自信がなくて、
ちゃっかり反応している愚息を宥める。
たぶん元彼のであろうスウェットは、ちょっと丈が足りなかったが、拝借することにした。
寝室の扉が開いたままだったが、麻里絵ちゃんは寝ているようだったし、ソファーに座って水を飲む。
はぁあ…
辞めた煙草を吸いたい気分だ。
ソファーにも寝るに眠れず水を飲む。
「ヒジオ?」
「ひぃ、麻里絵ちゃん…」
「お化けでも見るような顔をして、失礼ね。」
「寝たんじゃなかったのか?」
「ん、寒くて目が覚めた。ヒジオ…朝まで一緒にって約束したよね?」
今の麻里絵ちゃんが、素面かどうかもわからないが、俺の手首を掴んでグイグイ引っ張るから…
付いていくしかなかった。
もう知らないぞ〜?
俺の何処かにそう言い放って…
はぁあ…
今日何回目かわからないため息が出る。
麻里絵ちゃんの寝室にはダブルベッドが置かれていた。
さっさと布団に入り、自分の横をポスポス叩く麻里絵ちゃんは、相変わらず素面とは思えない。
諦めて隣に潜り込んで背を向けると、背中にピトッと張り付いてくる。
「寂しくて寝れなかったの?」
「うん。」
何故か明るく言う麻里絵ちゃんに、どうにでもなれと向きを変えて抱き締めた。
「ヒジオ温かいね〜。」
破壊力抜群のミサイルを撃ち込まれて…
背中を撫でていると、
すうすうと可愛い寝息が聞こえてきた。
はぁあ…麻里絵ちゃん…このくらいは許してね。
小さく囁き、麻里絵ちゃんの額に唇を押し付け、破裂しそうな自分の心臓の音を子守唄に…なんとか…寝た。