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月下の幻影
第1章 月下の幻影
改札を抜けた真琴は、電車の行き先と、そのホームを確認する。
と、その時────
“真琴……”
急に誰かに話しかけられたような気がして、真琴はバッと辺りを見渡した。
しかしあたりに人影はいない。
「……」
もしかしたら────
昨日の夜の海でのあの出来事は、現実ではなかったのかもしれない。
妄想か、オカルト現象か、それとも────
「……幻、かな」
真琴は唇を引き締めて、リュックを背負い直す。
そして、自分の乗る電車が到着するホームへ向かって、ゆっくりとその一歩を踏み出した。
彼女はもう────二度と振り返らなかった。
【完】