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50センチの距離
第17章 ナポリタン
久し振りに村上さんと同行することになって、お昼は打ち合わせ先の近くのイタリアンに入った。
メニューを見ながらポツリと、

「ナポリタンってないんですかね…」

と呟いたら、村上さんが目を見開いた。

「ナポリタンなんて喫茶店メニュー、イタリアンにある訳ないじゃない。トマトベースのソースはあるけど、ケチャップ炒めは日本独自だよ?トマトベースのが良ければ、このページじゃない?」

と次のページを開いて見せてくれた。
ありがとうございます、とメニューを見ながら、うーん、別にトマトベースがいい訳じゃないんだよね…と、キノコのラグーソースにした。

「ナポリタンて日本発祥なんですか?」

「そうでしょう。ナポリは南部の海辺の街だから、魚介系の料理が多いんだ。わざわざ地名をつけるくらいなら絶対魚介が入ってると思う。でもナポリタンてソーセージじゃん。その時点でもう本場のじゃないって思わない?」

そう、なんですか…?

「や、高塚さん…オンブラージュのね、ナポリタンがすごく美味しくて、私大好きなんですけど…昔から作ってたって言ってたんで、イタリアンレストランで働いてた時かなぁ、と思って…」

村上さんはふぅん、と唸って、

「あそこのマスターが実際どこで働いてたかは知らないけどさ、もし、俺が知ってるアルジャーノ出身だとしたら、アルジャーノにナポリタンはなかったと思うよ。」

「そうですか…」


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