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愛おしいキミに極甘な林檎を
第65章 番外編:Totus tuus

「花城課長、部長が呼んでおります」
「ああ、分かった」
三月上旬。温かい春の日差しが差し込み始めた中、私は勤めている会社で仕事に励んでいた。
でも数時間も集中力は続かない。
今なんか課長の郁哉さんが他の課の女性社員に呼びだされて、デスクから離れていくところを気づかれないように目で追ってしまっていた。
郁哉さん……。
私にとって大切な人だ。……仕事をするという観点では。
そう割り切ってはいるものの、もう昔のことのように思えるほど色んなことがあったのに一度好きになったことが忘れられない。
でもそれは当たり前か。
好きになったのは事実なのだから……。
海外出張に行ったソラ先輩が私を迎えに来てくれなければ彼と付き合う道を選んでいた。
それに似たような夢も見たのだから間違いないだろう。
私は……、もうすぐ結婚するというのにまだ複雑な気持ちを抱えている。

