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明日に架ける橋
第2章 秘めた想い
朝から様々なことが起こり、体も心も疲れているはずなのに、花憐はほとんど眠ることができずに朝を迎えた。
昨夜、部屋に戻った時に用意されていたベージュのワンピースを着て同じくベージュの靴を履く。
部屋であれこれ考えていると、使用人の女性が熱い紅茶と朝食を持って来てくれた。
「伯母さまには何時頃お会いできるかしら?」
「奥様は10時にはお部屋に来るようおっしゃっていました」
花憐はわかりましたと言って、時計を見た。
今は7時である。清人はいったい何時頃来てくれるのだろうか・・・。
朝食を食べたあと、本当なら庭を散歩して過ごしたかったが、貴子たちが外で見張っているような気がしてやめた。
部屋に置いてあった何冊かの本に手を伸ばしてみたが、集中できずに時間がたつのをひたすら待った。
10時ちょうどに訪れるのは失礼な気がして、10分ほど過ぎた頃に、文子の部屋を訪ねに階下に降りた時だった。
「おはようございます」
使用人の女性と一緒に清人が玄関から続く廊下を歩いてくるところだった。
花憐はすぐに全身を緊張させ、顔を強張らせた。
清人はにっこり笑い、花憐に近づいた。
「今から鴻池夫人のところへ伺うつもりです。あなたは?」
清人の顔に緊張は見られず、和やかな笑顔だった。
「・・・・私もです」
「一緒に行きましょう。二人で報告したほうがいいでしょうから」
「あの・・・大河さん・・・」
「待って。その呼び方はやめよう」
清人は先導する使用人の女性をチラと見ながら、屈んで花憐に顔を寄せた。
「俺は君の婚約者なんだから。名前の方がいい」
「・・・・・!」
花憐は清人の言葉に思わず絶句した。
(’婚約者’って言ったわ・・・・!)
「名前で呼んでみて」
何も言えないでいる花憐をせっつく様にして清人が言った。
「・・・清人さん」
花憐は言われるがままに名前を呼んだ。
「いいね。早く慣れるように。俺の方は・・・花憐でいいかな」
呼ばれてドキリとした。
「よし、じゃあ、夫人にご報告しよう」
清人はそう言って花憐の背中をそっと押した。
どうやら清人は花憐の提案を承諾してくれたのだ。
嬉しさと不安がない交ぜになった何とも言えない複雑な気分になりながらも、花憐は自分で人生を切り開いていくのだとういう手ごたえを感じたのだった。
昨夜、部屋に戻った時に用意されていたベージュのワンピースを着て同じくベージュの靴を履く。
部屋であれこれ考えていると、使用人の女性が熱い紅茶と朝食を持って来てくれた。
「伯母さまには何時頃お会いできるかしら?」
「奥様は10時にはお部屋に来るようおっしゃっていました」
花憐はわかりましたと言って、時計を見た。
今は7時である。清人はいったい何時頃来てくれるのだろうか・・・。
朝食を食べたあと、本当なら庭を散歩して過ごしたかったが、貴子たちが外で見張っているような気がしてやめた。
部屋に置いてあった何冊かの本に手を伸ばしてみたが、集中できずに時間がたつのをひたすら待った。
10時ちょうどに訪れるのは失礼な気がして、10分ほど過ぎた頃に、文子の部屋を訪ねに階下に降りた時だった。
「おはようございます」
使用人の女性と一緒に清人が玄関から続く廊下を歩いてくるところだった。
花憐はすぐに全身を緊張させ、顔を強張らせた。
清人はにっこり笑い、花憐に近づいた。
「今から鴻池夫人のところへ伺うつもりです。あなたは?」
清人の顔に緊張は見られず、和やかな笑顔だった。
「・・・・私もです」
「一緒に行きましょう。二人で報告したほうがいいでしょうから」
「あの・・・大河さん・・・」
「待って。その呼び方はやめよう」
清人は先導する使用人の女性をチラと見ながら、屈んで花憐に顔を寄せた。
「俺は君の婚約者なんだから。名前の方がいい」
「・・・・・!」
花憐は清人の言葉に思わず絶句した。
(’婚約者’って言ったわ・・・・!)
「名前で呼んでみて」
何も言えないでいる花憐をせっつく様にして清人が言った。
「・・・清人さん」
花憐は言われるがままに名前を呼んだ。
「いいね。早く慣れるように。俺の方は・・・花憐でいいかな」
呼ばれてドキリとした。
「よし、じゃあ、夫人にご報告しよう」
清人はそう言って花憐の背中をそっと押した。
どうやら清人は花憐の提案を承諾してくれたのだ。
嬉しさと不安がない交ぜになった何とも言えない複雑な気分になりながらも、花憐は自分で人生を切り開いていくのだとういう手ごたえを感じたのだった。