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私の欠けているところ
第9章 だから俺はその地獄から抜け出したくて
しばらくして
時の身体から
力が抜けて脱力すると
俺は
唇を離して
時をゆっくりと
仰向けにさせ
隣に
肘をついて
添い寝をした
すると
時は
黙ったまま天井を見つめ
そして
ツーっと
涙を流した
「嫌なこと…言わせてごめんな」
心の底から
そう思っていた
だから
俺の胸も
締め付けられて
痛かったっけ
「…ううん…
これが…私だから」
「けど…なんでそんなこと…」
時は
無表情で
天井を見上げたまま
話を続けた
「それは
今でも分からないの
変なことされてたって
わかったのは
もう何年も経ってからだったし
親とは
それを相談できるような
関係じゃなかったし
きっと
本当のことなんて
教えてくれないだろうし…
私の予想では
多分
私を泊まらせる見返りに
おじさんから
お金をもらってたんだと思う
そして
そんなことをしてるのが
途中でおばさんに
バレたんだと思う
あれから
親戚付き合いが
全くなくなったから
それと同時に
家族みんな
私にもっと冷たくなって…
お兄ちゃんも
お姉ちゃんも
だから
その家には居たくなくて
高校卒業してから
すぐ実家から離れて
あのアパート借りたの
そこに
ずっと住んでる
お金…ないから
家族とは
会ってないよ
あれから
一度も」
「時…」
「私ね
こんな話
誰にもしたことないの
でも
陸が自分のこと
ゲイだって言ってくれた時
もしかして
陸には
話せるのかな…って
思ってたんだ
見せたくないところ
見せられるのかなーって…
だから
ごめんね?
ずるずる
陸と
こんなことになって…」
「謝るなよ
俺が
時と離れたくなかったんだから
時と
こうなりたかったんだから」
そう言って
時の頰に触れると
時は
その俺の手を
ぎゅーっと握りしめて
溢れそうな涙をこらえた
「優しいね…陸…」