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私の欠けているところ
第9章 だから俺はその地獄から抜け出したくて

「優しくなんかないよ…」



「ねぇ、陸」


時は
天井から視線を外し
やっと
俺と目を合わせてくれた


「ん?」



「聞いてくれる?

全部」



「もういいよ、時

辛いこと
思い出させて
ごめんな」



「ううん
陸に全部聞いて欲しいの

話したいの…」




「じゃあ…聞くよ

時のこと…全部」



そして
どちらともなく
手を繋ぎ

時は

俺の目を
しっかりと
見つめたまま
話し始めた



「私ね

もっと
褒められたかったんだ.

お兄ちゃんや
お姉ちゃんみたいに。


両親にもっと
かまって欲しかったし
心配してもらいたかった

もっと

もっともっと
必要だよって
思ってもらいたかった

褒められたくて
どんなに頑張ってもね
親は
私に無関心だったの


でもね

今の会社でアルバイト
することになって

仕事を頑張ったら
すごく褒めてもらえて

感謝までされて…
驚いちゃった


嬉しかったな…


だから
仕事頑張るの
今でも好き

必要とされてるって
感じるし

満たされる」



「うん

それは…わかるよ」



「でもね

ある日
満たされること
もう一つ
見つけたの」



「…うん」



「恋人ができたの

付き合って欲しいって言われて
付き合って

キスされて

抱きしめられて



そしたら


私ね


涙が出るほど
満たされたの


必要とされてるって感じたし
セックスしてる時
彼は私だけを見てくれた

寂しくなくて
満たされて

喜んでくれることすれば
褒めてくれた


普通…

私みたいな経験すると
男の人が苦手になったりすると
思うんだけど

私は
違うみたいで…



うまく言えないんだけど



セックスしてる間は


幸せだった」





「…そうか…」




「おじさんだけだったの」



「え?」




「子供の頃
私を必要としてたのも
褒めてくれたのも…」




「うん…」



「だから

おじさんじゃない人に



褒められて

必要とされたいのかもしれない」



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