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私の欠けているところ
第11章 時を捕まえたときにはもう…

何度も触って

何度も眺め

何度も
舐め回した
素肌だった


一時は
俺のものだと
錯覚さえした
時の身体は

俺の見たことのないものに
なってしまったんだろうか…


「恥ずかしがらなくていいよ。
綺麗なんだから」


「……」


「まだクラクラする?」


「…少し
でも、すぐ良くなるから…」


貧血で立ちくらみなんて
慣れてるんだろう
時は
慌てることなく
静かに
目を閉じていた



「梶谷くん…」


「ん?」


「私のこと
時ちゃんって
呼んでないよね?」


「え?…あ、うん
呼び捨てしてる。
ごめん」


「いいの、呼び捨てで。
さっきお風呂でも
呼び捨てだった?」


「あー…多分。
覚えてないけど」


「…そっか…」



「それが…どうかした?」



「ううん…

嫌なこと
思い出しちゃっただけ」



「…そうか…」



忘れたいこと
思い出したくないこと
忘れたくないこと
思い出したいこと

時の中で

それがなんだか
ぐちゃぐちゃに
なってるみたいだった


あの日の時は

封印してた記憶を思い出したり
俺のことを忘れたり
つい昨日のことを
思い出せなかったり
してたんだ


「思い出したくないなら
また忘れたらいいよ」


俺のことは
思い出して欲しいけど


「あのね…」


「ん?」


「Siriさん」


「(笑)なんだよ」


「嫌じゃなければ」


「何?」


「添い寝をしてくれませんか?」


俺の胸が
ドキンと音を立てた


「いいよ」


俺は
素肌にタオルケットをまとった
時の隣に横になると
タオルで
髪を優しく拭きながら

猛烈に
キスしたくなっていた


「どうしたんだよ、急に」


「安心したから…
眠る前に
添い寝してもらったとき」


「そうか」


「知らないこと知るって…
ちょっと怖いね」


「……そうかもな」



「なんか…」



「ん?」



「嫌だな」



「何が?」



「もっと色んなこと
思い出すかもしれないと思うと

怖い」



…時…

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