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私の欠けているところ
第12章 時は俺の事を忘れてしまってたんだ
それから俺は
『Siriさん』になった
時が話したいときは
話を聞き
時が
話を聞きたいときは
俺が話をし
寒いと言えば
抱きしめていた
俺、思うんだけど
時は途中から
俺が
『梶谷』じゃなくて
『陸』だって
思い出したんじゃないかな…
俺が『陸』だとわかって
二人でやった
色んなこと思い出して
それで俺を
Siriにしたんじゃないかって
思うんだ
何を言っても
返事をしてくれる
好きにはなってもらえないけど
嫌いにはならない
ちょうどいい関係の
機械のSiriに。
「お腹…すいたかも」
「よし!
すぐあっためるから
時はちゃんと着替えて
待ってろ」
「…うん」
そういえば
ちょっと照れて笑う時は
見たことのない時だったな…
大人ぶってなくて
年上しょってなくて
子どもみたいで
……そう
親に甘える
子供みたいだった
時が着替えて
髪を乾かしてる間
俺は雑炊を温め
ほかにも買ってきた総菜を
テーブルに並べた
いつ起きるか分からない
時を待って
俺も何も食ってなくて
腹ペコだった
「わぁ…美味しそう」
「そうか?」
「うん、すごい」
「父子家庭の長男なめんなよ?(笑)
あ、けど
食べすぎ禁止な」
「え~」
「一回にいっぱい食べたら
また吐いちゃうだろ?」
「あ…うん」
しょんぼりする
時が可愛らしくて
俺は
たまらず
無意味に時の頬を触った
「なに?」
「なんでもねー
食わしてやろうか?」
「え?」
「あ~んしてやろうか」
「いいよ、そんなの」
「したいんだよ」
「いいって」
「時」
「ん?」
「したい」
「……じゃあ、一回だけ」
本当はキスしたかったんだけど
「よ~し
じゃ、あ~ん…」
「……ん…」
時は
めちゃくちゃ
恥ずかしそうにしていたけど
ちょっと
嬉しそうだった