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私の欠けているところ
第12章 時は俺の事を忘れてしまってたんだ
腹がいっぱいになると
薬を飲み
しばらく
のんびり過ごしてから
ベットに横になり
時が
「Siriさん」
と呼ぶから
また添い寝をした
抵抗しない時に
Siriは勝手に
髪を触り
頬をなでたり
耳たぶを指先で揉んだりした
そのとき
ふと俺は気が付いたんだ
時の携帯を
見ていないことに
携帯でLINEの
俺とのやり取りを見れば
俺が陸であることも
どんな関係だったかも
分かるはず
けど
俺は
時の携帯を
そういえば
見ていなかった
「Siriさん」
「ん?」
「もうすぐ夜です」
「そうだな」
「鍵は探さないんですか?」
「クスッ(笑)
鍵無くしてんの忘れてた。
夜でもう探せないから
今日はここに泊まるしかありません」
「クスッ(笑)」
「だから時は
一晩中でも
Siriに話しかけられます」
「そうなんだ」
「お願いもきいてもらえます」
「ラッキー」
「あ~ん…もしてもらえます」
「クスッ(笑)」
「ほかに
してもらいたいこと
ありますか?」
「ん~…」
キスして欲しいって
言わないかな…
「魔法を使って
忘れさせて下さい」
「なにを?」
「……全部」
「Siriは魔法が使えません」
「……」
「だから
その代わりに
嫌なことを
忘れてしまうほど
楽しい時間を
差し上げます」
「り…Siri、優しいね」
「普通だよ」
俺が陸でも
梶谷でも
Siriと同じように
甘えさせてやるのに
「なぁ、時」
「ん?」
「いいこと教えてやろうか」
「なに?」
「辛い思い出とか
悲しい思い出はさ
時間とともに
辛さや悲しさが
だんだん薄れていく」
「……」
「逆に楽しくて
幸せな思い出は
楽しかった気持ちや
幸せな想いが増して
その時よりももっと
すげー楽しかったって
思うようになるんだ」
「…ほんと?」
「ほんと」
「ほんとにほんと?」
「ほんとにほんとにほんと」
「じゃあ…」
「ん?」
「生きていけるかな…私」