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私の欠けているところ
第2章 『はじまり』に変わったのは
「恋人いるのに
俺に付き合ってくれて
ありがとうございます」
「ううん、いいの。
心配だったしそれに…」
「それに?」
今日はもう
あの男とは会えなくて
寂しかったから?
それとも
あんなことがあって
悲しかったから?
「……焼き鳥、食べたかったし」
深海さんは
そんな分かりやすい言い訳を口にしながら
また携帯を気にするような仕草をみせた
男から連絡が
くるのかもしれない
だとしたら
どうしてそんなに
悲しそうな顔するんだよ
恋人なんだろ?
俺はその時
心の声を
本当に口にしてしまいそうなほど
深海さんを
慰めたい気持ちで
いっぱいだった
「いいですよ、携帯」
「え?」
「どこかに連絡しても
連絡が来てないかチェックしても。
俺は気にしないですから」
「ご、ごめんね?
そんなんじゃないの。
連絡が来てないのも…
わかってるから」
そう言った深海さんは
携帯をバックの中に
しまおうとした
「待って」
「え?」
「相談…」
「……」
「相談したい時
連絡してもいいですか?
……その携帯に」
「……」
恋人がいるのに
俺に付き合ってくれたのは
多分俺が
本社に配属になったばかりで
相談事があると思ったからで
しかも俺は一回り近く年下で
きっと恋愛対象じゃないからだろう
心配してくれたことは嬉しかったけど
男として見られていないことに凹みながら
それでもどうにか
俺は深海さんとの接点をもちたくて
食らいついた
「会うのがマズイなら
相談は電話でもLINEでもなんでもいいです」
「……」
「俺が相談するだけじゃなくて」
「……」
「深海さんの相談にも
のりますから」