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私の欠けているところ
第6章 苦しくて…苦しくて…
「ごめん、先に入っててよかったのに」
「そんなに待ってないから」
仕事を終えた俺は
俺の住む部屋の
近くのコンビニで
俺の帰りを待ってた
時ちゃんに声をかけた
何かあったら
いつでも入っていいよと
鍵を渡してるのに
時ちゃんは
まだ一度もその鍵を使ったことがない
「腹減った。
何か買って帰ろ」
「うん。
お腹空いてるなら
ちょっと安心した」
「え?」
「もっと凹んでると思ってた」
あ…忘れてた
俺、時ちゃんに会いたくて
仕事で凹んでるって
言ったんだっけ
「時ちゃんの顔見たら
元気でた」
「もう(笑)」
それから俺達は
手慣れた感じで買い出しを済ませ
俺の部屋に向かった
隣を歩く時ちゃんは
今日も柔らかな髪の奥に
小さなピアスをしていて
可愛らしい
季節はもう夏で
袖の短いワンピースが
俺には眩しく見えた
風が吹くと
気持ちよさそうに
髪を揺らす時ちゃんを見てると
給湯室で
時ちゃんに再会した
あの日を思い出した
「時ちゃんさぁ」
「ん?」
「新入社員研修の時は
もっとクールな人に見えてた」
「それ、よく言われる(笑)」
「やっぱり?
全然笑わないし
すっげー怖い顔してた(笑)」
「それ、緊張してたの」
「え?」
「失敗しちゃいけない!って
緊張してた。
他の人みたいに
全然余裕なくて(笑)」
って
俺を見る時ちゃんは
最高にゆるっとした笑顔で
俺の彼女だったら
こんな人前でも
うっかりキスしてしまいそうなほど
可愛いかった
こんなにも
近くにいて
ハグしても
拒否されなくて
凹んでたら
慰めてくれる
それでも
時ちゃんは
人の女だ