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第1章 抱かれる女
自転車を押して、母のアトリエへふたりで向かった。

「好ちゃんのお母さんって何をしてるの?」

「人形師?っていうのかな。ちょっとキモい人形作ってるの」

私を塾へ迎えに来た母に涼は会っている。好はお友達が居ないから仲良くして下さいねと余計なことを母は言った。

「お母さん綺麗な人だよね」

「そうかな?そうでもないよ」

授業参観へ来ると皆に言われるけれど、私はそう思ったことは一度も無い。

「いくつ?」

「40」

母が25歳の時に私が生まれた。

「そうなの?40歳には見えないよ。最初あったとき好ちゃんのお姉さんかと思ったんだ」

涼は、お世辞を言わないから本当にそう思ったんだと思う。

「みんなそういう」

同じ学校の子が通り過ぎたけれど、制服を着ていないので気が付かなかったようだ。

…私と噂になったりしたら、涼くんが嫌だろうな。

ふとそんな風に思った。

「高校入っても塾へは通うの?」

「うん。そのつもりだけど…涼くんは?」

「俺も…通う。講師の先生の教え方が好きだから」

それを聞いて少しほっとした。いつの頃からか、気が付くといつも隣の席に座っていた。別段お互いが気にしていたわけでは無いけれど、気が付いた時にはそうなっていて、それからはずっと隣の席だ。

「じゃぁまた一緒だね」

涼は何も言わなかった。

アトリエの前の駐車場に2人の自転車を止めた。

「電気付いてないよ?」

普段は煌々と明かりがついている通りに面したショーウィンドは、真っ暗だった。

「あれ?もう家に帰っちゃったのかな?」

シャッターを閉めていないことから、母は帰り支度をしているのかも知れない。裏口からそっと2人で入った。暗闇に目が慣れてきて、ライトのスイッチに手を掛けた時だった。


「小牧…くん…」


その声を聞き、涼が私の手を止めた。


…!!

もつれあう二つの影。

それに気が付くと今度は、涼が慌てて部屋を出て行こうとしたので、私がそれを止めた。














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