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第1章 抱かれる女
「ちょっと!白井さん。塾9時に終わるって嘘じゃない!」

1週間過ぎたころ、再びあの女子に呼び止められた。

体育の時に、友達に聞いたところ、4組の高杉 笑(たかすぎ えみ)だと分かった。

「私、9時なんて言ってないと思うけど?」

「言ったわよ!いついっても塾閉まってるんだもの。調べたら、8時には終わるんじゃない」

…だったら最初から自分で調べればいいのに。

「あなたも司くんのこと狙ってるの?だから嘘教えたのね?」

笑は、食ってかかった。

「なにそれ?なんでそうなるわけ?」

「白井さんみたいな子、司くんが相手にするわけ無いじゃない!」

…なんだ。友達がとか言ってて、結局自分のことじゃん。

「だから好きでもなんでもないって。私から涼にあなたのこと伝えといてあげる」

「ちょ…やめてよ!」

笑は、慌てていた。

「余計な事言われたく無かったら、もう私には、関わらないでくれる?そーゆーの面倒なの」

廊下での言い争いに、笑の仲良しグループの皆様がやって来たので、私はさっさと教室に戻った。

背中から聞こえる、ひっどーい!サイテー!の声。

…どうしてみんな一緒に居たがるの?

私には理解できない。楽しくもないのに話を合わせて笑ったり、好きでもないアイドルの話を聞いたり、面倒なだけじゃない。

…全てが嘘に見える。

クラスにも少し話したりする子もいるし、ノートの貸し借りだって出来る友達は居るけど、ただプライベートでメッセージやメールのやり取りなんてしないし、家に連れてくるのも嫌だ。

「大丈夫?」

クラスに戻り、席に着くと学級委員の双葉冴(ふたば さえ)が声を掛けてきた。

「さっきの子達と何かあったの?」

無駄に正義感が強いタイプ。

「何も無いよ。大丈夫」

どちらかと言えば、笑よりも冴の方が、面倒臭い。

「何かあったら言ってね」

「うん。声を掛けてくれて、ありがとう」

関わらないでオーラを出さないように、気をつけつつ冴にお礼を言った。

…面倒でも一応ね。

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