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第1章 抱かれる女
小牧さんは、私が母の子供だから仲良くしてくれてるのかも知れないと思うと、どうでも良い事を話すのも気を使わせてしまって悪いかもと穿った見方をしてしまう。

「好ちゃんは?学校はどう?楽しい?」

「うーん。普通」

「ははは…好ちゃんって大人びてるよね。俺よりも世の中の事いっぱい知ってそうな目をしてる」

小牧さんは、笑うとえくぼができる。

…ちょっと可愛いが…タイプでは無い。

「それって小牧さん、遠回しに老けてるって言ってるの?」

「いやいや!違う違う。なんか落ち着いているっていうか、冷めてるっていうか…今の中学生って皆んなそうなのかなぁ」

「すれてるって事?」

確かにみんなにはちょっと変わってるって言われる事が多いけど。

「ネガティブに捉えすぎだよ。俺が中学生の頃は、ゲームとか、漫画とかそんなんばっかり夢中になってたからさ。あとプラモとかね」

「ふーん。だからプラモの影響で?」

「そう…その延長で造形なんてやっちゃったのね」

「好きなことでご飯食べるって凄いことだと思うよ。だってパパなんて、院出てたって会社員だもん」

周りの大人を見てれば、将来の夢とか言われても、なんだか現実味が無いというか、夢と現実は明らかに違ったもので、男子が、グラビアアイドルの雑誌を見て凄ぇとか言ってるのと、クラスの女子の中でどの子が好きとか言うくらい差があるんだし。

「先生の旦那…元旦那さんは、凄い人だと思うよ。才能のある奥さんを支えてあげてたんだし、好ちゃんだってなに不自由無く暮らせているんだし…」

「芸術家なんて、有名になれるのは一握りなのに、凄い博徒だよねぇ」

「賭博って博打じゃなくて?」

肘をついて小牧さんはちらりと腕時計を見た。

「限られたスキルの中で、これって言うものに人生をかけるんだから、賭博に近く無い?」

…ま。どっちも似たようなもんか。

「あ!いけねっ。じゃぁまた後で!先生が夕食は3人で食べましょだって。嫌なら俺、遠慮するよ」

「え?どうして?どうせコンビニ弁当とかでしょ?だったらママのお金で美味しいレストランで食べた方が得じゃ無い?」

「全く…好ちゃんと話してると、何だか同い年の友人と話してる気分になるんだよなぁ…じゃ…また後でね」

小牧さんは、大きな資料がぎっしり入ったバッグを下げて慌てて家を出て行った。

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