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空洞
第1章 相田 花奏(あいた かなで)

「…あ、うん。」
主語のないその言葉が、何を意味しているのか私にはわかる。
「いつもゴメンね。」
そうして、私を背後から抱きしめると、耳元に口づけをした。
そんな風にされると、何も言えなくなるじゃない。
それなのに、どうして…あんなこと?
いつも喉からそんな言葉が出かかるけど、声に出すことは出来ない。
あの瞬間を思い出すと、私の中の細胞が縮み上がる。きゅーっと血の気が引いていく様な緊張感。樹は私に何度もそんな思いをさせる。
結婚する前は、ただ大事にされているだけかと思った。
付き合って3年、樹は口づけ以上の事を私に求めて来なかった。
結婚が決まっても、それは変わらず。

