この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
永遠に共に
第1章 永遠に共に
少年は、妹の見舞いに訪れる度に、桜の木に会いに行った。
本を読むふりをして、少年は桜の木とずっと心の中で言葉のやりとりをしていた。
この瞬間だけは────心の底から楽しめ、その場に流れる空気が和やかで、時間が経つのがとても早く感じられた。
ずっとここで────彼と一緒にいられたら、と切に願った。
けれど────
『また、僕を見つけてよ』
『僕は、ずっとずっと待ってるから』
少年は本を抱き締め、泣き続けた。
その本は、男が生前に書いたもの。
出会って、別れて、また出会ってを繰り返し────
愛を深めていく、様々な人間の物語。
その小説のように
男と女は────
別れ、出会い、また別れ────
そうして、彼らだけの愛を、深めていき────
時を超え、いつか彼らはもう一度、この世界のどこかで出逢うだろう。
『絶対……会えるから』
『次に生まれ変わったとき……僕がいなかった間の、君の話を聞かせてね』
『楽しみにしてるよ────美奈子』
夜風が強く吹き付けた。
僅かに残っていた花びらが、ついに力尽きたように枝から離れ────
風に揺られながら、夜の空へと飛んでいった。
【完】
本を読むふりをして、少年は桜の木とずっと心の中で言葉のやりとりをしていた。
この瞬間だけは────心の底から楽しめ、その場に流れる空気が和やかで、時間が経つのがとても早く感じられた。
ずっとここで────彼と一緒にいられたら、と切に願った。
けれど────
『また、僕を見つけてよ』
『僕は、ずっとずっと待ってるから』
少年は本を抱き締め、泣き続けた。
その本は、男が生前に書いたもの。
出会って、別れて、また出会ってを繰り返し────
愛を深めていく、様々な人間の物語。
その小説のように
男と女は────
別れ、出会い、また別れ────
そうして、彼らだけの愛を、深めていき────
時を超え、いつか彼らはもう一度、この世界のどこかで出逢うだろう。
『絶対……会えるから』
『次に生まれ変わったとき……僕がいなかった間の、君の話を聞かせてね』
『楽しみにしてるよ────美奈子』
夜風が強く吹き付けた。
僅かに残っていた花びらが、ついに力尽きたように枝から離れ────
風に揺られながら、夜の空へと飛んでいった。
【完】