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第10章 取らないで…



ため息が出る。


「理梨ちゃんが涼二君しか嫌だと思うなら涼二君といっぱい恋愛をすればいいだけだよ。羨ましいくらいに理梨ちゃんって愛されてるんだから…。」


優しくて控えめな静香さんの強さを初めて知った。

霧島さんのような人と結婚をして子供を作る事にそんな強さが必要なんだと感じた。

静香さんが疲れないようにと早めに眠る。

明日は試合…。

観客のほとんどの人がイベント感覚。

私と静香さんにとっては人生の戦い。

負ければ自分を責める事になる。

勝ち続ける為に私が涼ちゃんにしてあげられる事はなんなんだろう?

涼ちゃんを支える為の恋愛…。

きっと国崎さんの時のように嫌な思いをしても我慢をしなければならない恋愛…。

それに耐えられないなら涼ちゃんとは別れて他の人と恋愛をする人生を送る事になる。

涼ちゃんは…、何故、私だけと決めたのかな?

いつの間にか眠っていた。

朝食を済ませて試合会場であるアリーナに向かう。

既に並ぶ観客の人達を見て考える。

涼ちゃん以外の人と恋愛をするとしたら格闘を観に来る男の人はきっとお断りだと思う。

その前にやっぱり涼ちゃん以外の人との恋愛なんか考える事が出来ない。

なのに涼ちゃんと具体的な未来も想像が出来ない。

単純に想像が出来る姿といえば…。

私が一方的に怒鳴り散らして涼ちゃんが平謝りしている姿…。

犬男の情けない顔しか想像が出来ない。

そんな馬鹿な想像をしている間にいつもの派手なオープニングが始まった。

今日はテレビ放映はない分の試合だけれどもオープニングは毎回同じパターンで行われる。

違いは女性のドレスが今回はチャイナドレスになっているくらいだ。


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