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VERTEX
第15章 迷子…
ずっと俯くだけだった。
今日は勇気君の試合すら見る気にならない。
いつものアリーナ…。
いつもと変わらない試合の流れ…。
今回もDVDのみの販売でテレビ放送はされない試合なのに年末のビックイベントの出場選手が決定する試合だからと客席は満席になっている。
各階級のベスト8が戦う試合に相変わらずの熱気が会場の中を埋め尽くす。
エキシビション扱いの勇気君は前座扱いの試合。
「そんなに気になるなら…、行ってくれば?」
私の背中を撫でて静香さんが言う。
「行くって…?」
「なんの為のジムパス?VERTEXに利用される為だけじゃないでしょ?涼二君のところに行っておいでよ。まだ試合までは3時間もあるのだから…。」
落ち着かない私の為に控え室に行って来いと静香さんが私の背中を押してくれる。
「行きなさい…。理梨ちゃんがそんな顔をしてたら涼二君だって戦えないのだから…。」
やっぱり静香さんって強いと思った。
「行ってきます!」
試合の合間を利用して客席から飛び出した。
問題は…。
涼ちゃんの控え室がわからない。
部外者立ち入り禁止の張り紙が付いた扉を開けて恐る恐ると中へ入る。
下手にウロウロとすれば外に連れ出されてしまう。
ましてや私は方向音痴…。
そんな私に裏方の通路はラビリンス以外の何ものでもない。
怖々と通路を進んでいた。
時々、VERTEXのスタッフの人や他のジムの人が私の横を走り抜ける。
そのたびに連れ出されてしまうかもと1人でビクビクとしながら涼ちゃんの控え室を探してウロウロとしてしまう。
「何してるの?隠れんぼ?」
背後から肩をポンッと叩かれた。