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VERTEX
第15章 迷子…
しばらくはその通路で私が泣くから勇気君が私の頭を撫でていた。
「RYOJIさんと話は出来なかったのか?」
首を横に振る。
「試合が終わったら…、説明をしてくれるって…。後は勇気君達に近づくなって…。」
「そりゃ、そうだろ?内山田さんところも霧島さんが頂点を続けられないとなれば必死になる。」
「そうなの?」
「俺はキックだから…、ジムは始めっから頂点は無理だと判断をしている。だけどシュートジムの関係者はこのチャンスを逃す気はない。」
勇気君の話に怖くなって来る。
「霧島さんに何があったの?」
「俺が知る訳ねぇじゃん。内山田ジムの関係者はお前だろ?」
勇気君が呆れた顔をして客席に向かって歩き出す。
私は内山田ジムの関係者?
ジムの秘密はいつも会長さんと篠原さんくらいしか知らない話になっている。
私は何も知らされない部外者…。
「部外者だもん…。」
「だったら裏方をウロウロとするな。」
勇気君が笑っていた。
「ねぇ…、稲川さんって知ってる?」
「広報記者のか?」
「うん、そう…。」
「俺も1回はインタビューを受けた。」
少し自慢気に勇気君が話す。
「嬉しい事なの?」
「そりゃ、VERTEXの広報の記事はほとんどをあの人が書くからさ。人気投票にも影響するんだよ。」
VERTEXは強いだけの選手が頂点になる訳じゃない。
「涼ちゃんの控え室にその稲川さんが居た。」
「だから…、RYOJIさんが次の頂点だって噂になるんだよ。それに…、稲川さんってRYOJIさんの元カノって噂もあったし…。」
勇気君の言葉に固まった。
涼ちゃんは今まで誰とも付き合った事なんかないはずなのに…。
元カノとかなんで噂が出たりするの?
立ち止まった私を勇気君が見る。