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VERTEX
第15章 迷子…
試合が全て終われば打ち上げに静香さんと向かう。
「理梨ちゃん…、大丈夫?」
静香さんが私に気を使う。
本当は妊婦の静香さんを私が気を使わなければならないのに…。
静香さんのお腹はもう目立つから誰が見ても妊婦だとわかる状況だ。
だからVERTEXのスタッフさんも静香さんの為に椅子を用意して勧めてくれる。
いつものように打ち上げ会場の隅っこで静香さんと2人で涼ちゃん達を待つだけの時間。
国崎さんの姿がない。
国崎さん側がVERTEXの仕事を拒否したのか、VERTEX側が国崎さんの仕事を解除したのかはわからない。
ただ女優として、国崎さんはあのCMの後からはそれなりにあちこちのドラマに出るようになっていたのは事実だから、あの崖っぷちを無事に脱出はしたのだとは思う。
そうやって誰もがVERTEXを利用してのし上がろうとする世界で凡人の私だけが取り残されていく。
「お飲み物でもお持ちしましょうか?お姫様…。」
背筋がゾクリとする。
「ミケ!」
「わぉっ!?いきなりなんですか?」
「近寄らないで!」
「えーっと…、何故です?」
目を丸くしたミケが聞いて来る。
何故って…。
霧島さんを倒して次の頂点を狙ってる人だから?
「Mrs.霧島に挨拶をしたいだけなのに…、理梨って以外と厳しいですね。」
とぼけるようにミケが言う。
「挨拶?」
静香さんがミケを見る。
「年末の決勝では僕がMr.霧島と戦う事になりますからね。」
ミケがニヤリと笑った。
「その前に準決勝があるよ。」
ミケに嫌味を言ってみる。
「その相手なら前に勝ってます。今、倒したいのはMr.霧島だけです。」
そんなミケに静香さんが笑う。
「悪いけど…、恭ちゃんが勝つわ。」
静香さんが穏やかな顔でそう言った。