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VERTEX
第15章 迷子…
静香さんは霧島さんが頂点を降りる事を知ってて言っている?
それとも知らずにミケのおふざけに合わせて霧島さんは負けないと言っている?
霧島さんを信じてるから?
目の前がぐるぐると回り出す。
「理梨?」
ミケが私の顔を覗き込む。
「君も座った方がいい。顔色が…、真っ青だ。本当に飲み物を取って来てあげるから…。」
静香さんが私に席を譲りミケに抱えられてその椅子に座ってた。
「理梨ちゃん…、何があったの?」
静香さんが本当に私を心配してくれている。
私は黙ったまま首を横に振るしか出来なかった。
ミケが戻って来て炭酸の入ったジュースの紙コップを私の手に握らせる。
「ご飯をちゃんと食べてますか?なんなら、この後に食事でも行きますか?」
ミケが優しい笑顔で私に問いかける。
涼ちゃんは近づくなと言った人…。
霧島さんを倒して頂点を目指す人だから…。
でも、私にはミケが普通の人にしか見えない。
「ミケさん…、人の女には手を出すなってVERTEXから怒られたばかりだろ?」
涼ちゃんの声がする。
顔を上げると涼ちゃんが苦笑いをしている。
「あれは綺麗な女性にサインを下さいって言われたからサービスにキスをしたらスポンサーさんの奥さんだっただけですよ。」
ミケは呑気に笑っている。
「日本人は女性に対して、すぐに取ったとか取られたとか騒ぎ過ぎです。」
大袈裟にミケが首を振ると涼ちゃんが呆れた顔をする。
「理梨?大丈夫か?」
涼ちゃんが私の手を握って椅子から立たせてくれる。
「挨拶はもう終わったから飯に行こう。会長さん達が待ってるから…。」
涼ちゃんがそう言うからミケに頭を下げて会場を出た。
部外者の私がジムの食事会に参加する。
全く食欲が出ずに会長さんや霧島さんが次のスケジュールについて話をする姿をぼんやりと眺めるだけの食事会だった。