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第16章 受験生…



勉強もまともに手につかずに夕方にはジムに涼ちゃんを迎えに行く。

ジムではハリセンを振り回す会長さんの足元にボロ雑巾になった涼ちゃんが座り込んでいる。


「徐々にテンションを上げろと言ったはずだ。初日から飛ばして練習する馬鹿がいるか!?」

「うるせえな…、休んだ分、感覚が掴めねえの。」

「頭を使え!頭を!」


バシバシとハリセンで叩かれている涼ちゃんにため息が出てしまう。


「犬男を引き取りに来ました。」


会長さんに声をかける。


「ほら、飼い主が来たからさっさと帰れ!」


会長さんがハリセンで涼ちゃんのお尻を叩くと涼ちゃんがフラフラとシャワー室へ向かう。

後は欠伸をする涼ちゃんを連れ帰りながらサイン会について話す事になる。


「サイン会には私は行かない。」

「えーっ…。」

「去年の事、忘れたの?」

「今年はそれはない。」

「とにかく行かない。」

「じゃあ、俺も行かない。」


こいつ…。

どんだけー!?

叫びたい気持ちを堪えて根気よく話をする。

涼ちゃんがご飯を食べる。


「涼ちゃんが行かない訳にはいかないでしょ?トップ5の1人なんだから。」

「霧島さんは東京だし…、理梨が居ないなら行きたくねぇもん。」


子供か!?


「それが涼ちゃんの仕事でしょ?」

「今日は…、眠い…。」


ご飯を食べながら船を漕ぐ犬男にまた、ため息が出てしまう。

今にも眠りそうな涼ちゃんを部屋に連れて行く。

ベッドに入れてから涼ちゃんにもう一度だけ話を試みる。


「1泊だけなんだし、私が居なくても我慢してよ。」

「………。」

「涼ちゃん…?」


返事がない。

既に涼ちゃんは夢の中…。

涼ちゃんと結婚をした場合、私が涼ちゃんと話す余地はほとんどないのだと理解をした。


「涼二の馬鹿ぁぁぁぁ!!」


幸せそうに寝る犬男を蹴飛ばしてからシクシクと痛むお腹を抱えて家に帰り、やはり食欲のないまま眠る羽目になっていた。


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