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VERTEX
第18章 2度とお断り…



タクシーで新幹線の駅に向かいながら無事の脱出を和美さんに伝える。


「新幹線の駅に居るスタッフに従って…。」


和美さんとミケはワゴン車の中で身動きが取れなくなっている。

あんな派手な宣伝用の車を使えば、そうなるのは当たり前だと思う。


「私と涼ちゃんは大丈夫だけど…、黒田さんは大丈夫ですか?」


私と涼ちゃんは地元に帰るから新幹線はこだまになり比較的に乗客が少ない。

東京に向かう黒田さんだけが1人でのぞみに乗る事になってしまう。


「大丈夫です。僕のマネージャーが名古屋駅で待ってると連絡が来てますから…。」


黒田さんが苦笑いをする。

今日の原因のほとんどが黒田さんのファンが原因だからとひたすら涼ちゃんに黒田さんが頭を下げる。


「VERTEXの段取りが悪過ぎんだよ。」


涼ちゃんは責任の全てがVERTEXにあるからと言って黒田さんと笑っていた。

新幹線の駅では思っていたよりも、すんなりと新幹線に乗る事が出来た。

やっと涼ちゃんと2人切りになり、静かに新幹線が走り出す。

気が抜けて涼ちゃんに聞いてみる。


「なんなの?この違いは…。」

「そんなもんだろ?格闘ファンなんて意外とマニアックな分類だからな。熱狂的ファンが付いてる人って黒田さんくらいだぞ?」

「そういうもんなの?」

「でなきゃ、頂点の霧島さんなんか日常生活すら出来なくなるだろ?」


言われてみればそうだと思う。

涼ちゃんにサインを求める人もテレビ放映やCMが出た直後に集中しているけれども、普段から押し掛けて来るファンまでは居ない。

それでも、サイン会は2度とお断りだと思う。

サイン会に付き添うくらいなら、家でお母さんと大福を食べている方が私には平和だ。

来年は何があろうとサイン会だけは付き添わないと誓っていた。


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