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VERTEX
第20章 親戚…

サバサバとした温子さんはうちのお母さんとも馬が合う人だったから、全く違和感を感じないまま
『私が義父さん達と暮らします。』
と言っておじいちゃん達と同居をしたから幸村家に争いや戦いは存在をしない。
そんな温子さんの後ろでモジモジとする5歳の女の子の姿が見える。
幸村家の奇跡とまで言われている望(のぞみ)ちゃん。
真っ直ぐな黒髪に大きなクリクリの二重まぶたの瞳に赤い唇の美少女。
望ちゃんには誰もが笑顔になるのに、肝心の望ちゃんの方が人見知りをするから、なかなか近付きにくいという存在。
「涼ちゃん!ねぇ、涼ちゃんってば…、後でサインをしてよ。」
妹とは違ってやんちゃな希君は涼ちゃんに夢中。
「サイン?」
「うん!学校で友達に自慢するんだ。」
そんな無邪気な希君の頭を涼ちゃんが撫でる。
「自慢をする為ならサインはあげられない。それがVERTEXの規則だからな。」
涼ちゃんはちゃんと子供相手でもダメな事はダメだと優しく教える人だ。
涼ちゃんの言葉に希君がうーんと悩む。
「じゃあ、自慢しない。宝物にする。それなら涼ちゃんのサインをくれるの?」
「希の為なら何枚でも書いてやるよ。」
涼ちゃんが希君を抱っこする。
その涼ちゃんの足元に行き望ちゃんが涼ちゃんの服を引っ張った。
私にも覚えがある。
涼ちゃんが何かを欲しいと言うと本当は欲しくなくても自分の分も欲しくなる。
望ちゃんは希君がサインを貰えると聞いて自分も欲しくなったのに、人見知りがあるから涼ちゃんにそれが言えなくて泣きそうな顔をしている。
サインの意味なんかまだわからない望ちゃん…。
ただ、純粋にお兄ちゃんと同じものが欲しいだけ…。
「望ちゃんの分もあげるから…。」
そう言って涼ちゃんは希君と一緒に望ちゃんも抱っこをする。
自分の親戚には敵意を出す涼ちゃんだけど、私の親戚には激甘の涼ちゃんだった。

