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VERTEX
第21章 負傷…



会場を出てアリーナの通路を走り、裏通路への入口へと向かう。

元来が方向音痴の私…。

一番近い入口なんかわからない。

辺りを見渡しながら、入口が見つかるまでアリーナの通路を走り抜ける。

アリーナの通路はどうせ1周しているのだから迷子にならない造りになっている。

やっと見つけた入口の扉を開き中へと滑り込むようにして入り込む。

ここからはジムパスが必要になる。

バッグからジムパス取り出して震える手でそれを握りしめる。

問題は…。

涼ちゃんは今は控え室?

それとも医務室?

どちらにしても場所はどこ?

方向音痴な自分に泣きたくなって来る。


「理梨!」


勇気君の声がする。


「勇気君…。」


気が緩み、一気に涙が溢れてぐしゃぐしゃの顔で勇気君を見た。


「来ると思ってた。RYOJIさんのところに連れてってやるから泣くな!」


勇気君に怒鳴られる。


「涼ちゃん…、涼ちゃんは?」

「今はまだ医務室で検査を受けていると思う…、多分、大丈夫だとは思う。」

「勇気君は…、今日は試合…、ないよね?」

「ないよ。だけど控え室でRYOJIさんの試合は見ていた。だから理梨が来ると思った。」


勇気君が私の手を握って歩き出す。

個室の控え室が使えるのはトップ5だけらしい。

勇気君は大部屋で他の選手達と試合を見ていた。

涼ちゃんの相手は平気で反則をするタイプ。


「だから、控え室の誰もが気にして試合を見てたんだけど…、レフリーが反則の瞬間を見逃したから洒落になんねぇって皆んな言ってたよ。」


そんな相手と次は自分達が戦うかもしれないとなれば選手の誰もがお断りだと言うに決まっている。

よりにもよって涼ちゃんはそんな人と戦った。

涼ちゃんにもしもが起きたらVERTEXを訴えてやるんだから…。

イライラとして勇気君と歩き続けた。

私が向かう進行方向から甲高く嫌な声がする。

こんな場所にまで…。

苛立ちはピークを迎えながら涼ちゃんの居る医務室の前で勇気君が立ち止まり、私は甲高い嫌な声の主を睨みつけるようにして立っていた。


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