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VERTEX
第23章 敗北…

頬に冷たいものが当たる…。
ふと、顔を上げてみた。
どんよりとした天気の中にチラリ…、またチラリと雪が降る。
クリスマスに見た雪よりも大きな結晶の雪がどんどんと増えて私に降り注ぐ。
まるで天使の羽根が舞うように見える。
その天使の羽根が世界を覆い私のちっぽけな世界を白く染めていく。
想像をしてみる。
この白い何もない世界で私が誰と居るのだろう…。
何も無くとも私が幸せで笑顔を向けられる人は誰なのか?
答えは始めから決まっている。
あの人が私しか想像出来なかったと言ったように私もあの人しか想像が出来ない。
ごめんね…、涼ちゃん。
今すぐに行くから…。
涼ちゃんに貰ったチケットを握りしめてアリーナの中へと向かった。
ギリギリに涼ちゃんの試合前には自分の指定席に座る事が出来た。
スポンサー席には咲良ちゃんも咲良ちゃんのお父さんも居なかった。
そんなのどうでもいいやと私は笑っていた。
彼と一緒に居たいのなら、どんな結果になっても私は最後まで応援をしてあげなければならない。
あの人をここまで追いやったのは私なのだから…。
情なんかかけちゃいけかった。
あの人が欲しいのは私という1人の人間の未来の全てだと理解をした。
それは、彼にとって巨大でとてつもないモンスターのような未来という存在。
そのモンスターと勝つ為に彼は今夜チャンピオンになる道を選んだ。
あの人にはVERTEXしかないのだから…。
その自信を失えば、また泣き虫に戻るあの人のお尻を私が叩く結果になる事をあの人はわかっていた。
だから私はリングを睨みつけてやる。
私が聞き慣れたテーマソングが聞こえて来る。

