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第28章 卒業…



涼ちゃんが戦う時の顔へと変わる。


「構いません。何度も言いますが俺はあくまでもファイターです。」


何故かうちのお父さんが笑い出す。


「涼ちゃん…、うちの会社がスポンサーをしている番組には出て貰わないと困るよ。」


まさかお父さんがそんな事を言うとは思ってもみなかった。


「お父さん!?」

「わかってます。おじさんの会社はうちの父さんの会社だから、断る事は出来ません。」


お父さんに涼ちゃんが苦笑いをする。


「会社とは?」


そう聞いて来る咲良ちゃんのお父さんにお父さんが堂々と胸を張る。


「大した会社ではありませんよ。自動車販売をしてて国内シェアがトップだというだけの会社です。」


お父さん達の会社は国内トップの自動車メーカー…。

だからCMスポンサーをしている番組はGグループの10倍以上はある。


「そんな大手に…。」


咲良ちゃんのお父さんが眉を顰めた。


「会社が大手ってだけで僕も涼ちゃんの父親もしがないサラリーマンですよ。」


お父さんが謙遜する。

それでも春にはお父さん達の会社のCMに涼ちゃんが出る事が決まっていると初めて聞いた。


「お父さんの会社のCMに出るの?」

「俺…、自分の車は父さんの会社でしか買わないつもりだから、父さんの会社から是非CMに出て欲しいって依頼が来たばかりなんだ。父さんの立場を考えたら断ったり出来ないよ。」


涼ちゃんが照れたように笑った。


「咲良…、帰ろう。」


咲良ちゃんのお父さんが咲良ちゃんと立ち去った。


「理梨をお借りします。」


涼ちゃんがうちのお父さんに頭を下げる。


「そろそろ、義父さんと呼んでくれよ。」


そんなつまらない事を言ってお父さんがお母さんと帰って行く。

私は涼ちゃんと手を繋いで歩き出す。

もう涼ちゃんと並んで歩く事に後ろめたい思いなどをする必要がない。

私は色々な意味でこの卒業を噛み締めていた。


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