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VERTEX
第28章 卒業…
講堂から正門に向けた正面通路に在校生や先生が造花で作ったアーチを掲げて私達を送り出してくれる。
そのアーチを潜りながら卒業生は
『ごきげんよう。』
と必殺技を繰り広げて学校を出て行く伝統行事。
保護者が待つ正門に向かって私達は呪文のように『ごきげんよう。』を繰り返して進んで行く。
涼ちゃんとうちのお父さんの姿が見える。
涼ちゃんの隣りには咲良ちゃんのお父さんも居る。
「パパ!」
咲良ちゃんが涼ちゃんに向かって駆け出した。
私はゆっくりと涼ちゃんに向かって歩き出す。
涼ちゃんは私しか見ていない。
「理梨…。」
スーツを着た王子様が私の為に手を差し出す。
キャーッ…。
黄色い声が私の周りから聞こえる。
「ねぇ…、本当にあの人が幸村さんの彼氏なの?」
「CMに一緒に出ていた女優が本命じゃないの?」
今更を北野さんと西岡さんが聞いて来る。
「涼ちゃんとはちゃんと婚約してる。」
それだけはきっぱりと答えてから涼ちゃんの前に立つと涼ちゃんが私の前髪に指を絡めながら
「卒業おめでとう。」
と笑顔を向けた。
「ありがとう。今からはどうするの?」
一応、涼ちゃんに確認をする。
涼ちゃんが咲良ちゃんのお父さんの方に向かって
「すみません…、今日は先約があるんです。それと仕事の話を申し込む時は必ずジムを通して下さい。」
と食事の誘いを断った。
「だが、うちのCMは断ったんだよね?」
咲良ちゃんのお父さんが嫌な顔をする。
「俺はファイターでタレントではありません。」
「なら…、今後はうちがスポンサーをしている番組にも一切出れなくて構わないんだな。」
高圧的な脅しを感じて私は涼ちゃんの腕にしがみつく。