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第29章 傍に居て…


涼ちゃんと車で海岸線を走る。

少しずつだけど卒業をした実感と新しい自分の未来への期待感にワクワクしてしまう。


「ランチはどこに行くの?」

「シーサイドホテルを予約した。」

「嘘!?」


この田舎町では一番の高級ホテル…。

ヨットハーバーも所有しているホテルだから宿泊客もクルーザーを持っているようなお金持ちしか来ないホテルのフレンチレストラン…。


「私…、制服だよ?」

「制服だからいいんだよ。泊まらないけど…、部屋も取ってある。」

「えーっ!?なんでわざわざ?」

「制服の理梨を見納めだから…。」


涼ちゃんが目を細めて懐かしそうに私を見る。

今更、ジロジロと見られるとなんとなく恥ずかしい。


「スケベ…。」

「何が?」

「制服をじっと見てるとか痴漢みたい。」

「理梨の最後の制服姿を見たら俺は痴漢と同じ扱いになんの!?」


ふざけて笑い合いながら海辺のドライブを楽しむ。

真冬の太平洋はどんよりとして轟々と海鳴りを奏でているのに私の気持ちはもう春の感覚で穏やかなポカポカ日和に匹敵するくらい和やかだ。

新しい未来…。

涼ちゃんと築く新しい自分。

やりたい事が見えて来ると未来への不安が薄らいで行くのだと思う。


ホテルのレストランでシーフードのフレンチを楽しみながら涼ちゃんが聞いて来る。


「マンション…、買った。理梨はどんな家にしたい?」

「あまり、物は起きたくないかな?」

「先に言っておくけど一部を改装するから入居はまだまだ先になるんだ。」

「改装?」

「一部屋を俺のトレーニングルームにするから…、防音にする必要がある。」


自宅でも身体が鈍るのを防ぐ為の設備を完備する予定の涼ちゃんに少し寂しさを感じる。


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