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VERTEX
第29章 傍に居て…
きっとトレーニングルームに籠ると私からはまたしても遠い人になってしまう。
「自宅でもトレーニングが必要なの?」
「理梨が居ない時間は何も考えたくないんだ。今までだって理梨が学校に行ってたりすると不安で堪んないんだよ。俺の知らない理梨が俺の知らない場所に居るって考えるだけで気が変になりそうなんだ。」
私が涼ちゃんを遠いと感じるように涼ちゃんにも私が遠いと感じる瞬間があると初めて知る。
「なら…、私が居る時はそばに居てよ。」
「そのつもりだから…、こうやって時間がある時は出来るだけ理梨とデートしたい。」
犬男がご機嫌の笑顔を見せる。
その笑顔に今の私はドキドキと胸が高鳴って来る。
今更なのに…。
涼ちゃんに恋してる。
涼ちゃんには可愛い女の子に見られたいと思う。
「ねぇ…、うちのお母さんの卵焼き以外だと涼ちゃんはどんなご飯が好き?」
「無理する事ないぞ?せっかく作って貰っても食えない時ばかりになるし…。」
「でも…、朝ご飯ならしっかりと食べれるでしょ?」
「しゃぶしゃぶとか本当は好きなんだ。けど…、朝からしゃぶしゃぶとか無理だし、霜降り肉もダメだから赤身肉のしゃぶしゃぶってパサパサして結局は美味くないってなる。」
涼ちゃんが苦笑いをする。
「ほんのちょっともダメなの?」
「理梨が食べるなら1切れくらいは大丈夫。」
基本は私と半分ずつの姿勢は全く変わらないのだと考える。
そういえば涼ちゃんのお母さんが酢の物やポン酢が味付けに使い易いと言っていた。
それは涼ちゃんが好きだからという意味…。
「出来るだけ…、涼ちゃんが食べたい物を作れるように頑張るよ。」
涼ちゃんの為に気合いを入れる。