この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
VERTEX
第29章 傍に居て…

「Gグループからの最後通告が来たわ。GグループのCMに出るなら番組にも予定通りにRYOJIさんを出すと…。」
和美さんが涼ちゃんの説得に入る。
「出ない。父さんの会社のCMが優先だ。」
「GグループはCM枠を10倍にしたのよ?」
「俺には関係ない。」
「関係はあります。もしミケをGグループがバックアップすれば、すぐにミケが頂点に立つ事になります。つまり約束通りにVERTEXは幸村さんの存在を認める事はないという事です。」
和美さんの淡々とした冷たい言葉に涼ちゃんが露骨に嫌な顔をする。
私が咲良ちゃんとCMに出るように涼ちゃんを説得すべきなのかを考える。
「涼ちゃん…。」
そう言いかけた瞬間だった。
「勝負をしませんか?」
ニヤニヤと笑うミケが不機嫌を丸出しにした涼ちゃんにそんな話を持ち掛ける。
「勝負?」
「トーナメントじゃ階級の違うMr.RYOJIとは戦えません。ですが僕達はあくまでもお互いがファイターです。タレントの真似事をして頂点に立っても僕も嬉しくはありません。」
「だから?」
「リングで決着をつけましょう。Mr.RYOJIが勝てば僕はCMの話を断ります。その時は間違いなくMr.RYOJIがVERTEXの頂点なのだと僕がテレビで言いますよ。」
「俺が負けてミケさんが勝った場合は?」
涼ちゃんが思いっきりミケを睨んでいた。
「わかってるでしょ?リングで負けた者は頂点ではない。理梨は僕が貰います。」
ミケが涼ちゃんを挑発する。
「勝手な事言わないでよ!?」
私だけが叫んでいた。
「いいよ…。俺…、絶対に負けねぇもん。」
こんな時に自信満々のRYOJIがミケの挑戦を受けて立つ。
階級が違うのに…。
明らかに涼ちゃんの方が不利な条件の挑戦に身体の震えが止まらないほどの不安に押し潰されるだけの私が居た。

