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VERTEX
第30章 星に願いを…

「霧島さんっ!ファイト!」
「任せとけ!」
霧島さんも楽しそうに会長さんが構えるミットにパンチやキックを繰り出している。
戦う事はただ憎み合うだけじゃないんだと、初めてファイター達を理解が出来たような気がした。
「ねぇ…、散歩に行こう。」
「今からか?」
「海岸に行きたいの。」
「いいよ。」
涼ちゃんと手を繋いでホテルを出た。
うちのお父さん達と涼ちゃんのお父さん達は仲良くバーでお酒を飲んでいる。
まだ未成年の私はお酒を飲まない涼ちゃんと海岸に向かって散歩する。
約束の石垣島…。
夏に来た時よりも寒いけど、地元よりは暖かくて夜風が気持ちいいと感じる。
「涼ちゃん…。」
空を見上げる。
雲一つない満天の星空は夏に見た時と変わらない輝きを放っている。
「相変わらず…、壮絶だな。」
「吸い込まれそうだね。」
「流れ星とか見えるかな?」
「見えるかも?」
「もし、見れたら理梨は何を願う?」
涼ちゃんが私の背中から抱えるようにして耳元で聞いて来る。
私は涼ちゃんに全身の体重を預けて答える。
「願い事はしない。」
「なんで?」
「星に願いをしても意味がないもん。私の願いは涼ちゃんにするって決めてるの。」
「俺に?」
「そうだよ。いつだって涼ちゃんが私の願いの全てを叶えてくれたもん。」
私の為に泣き虫なだけの男の子を止めた。
私の為に戦える人になった。
私の為に家族を一つにしてくれた。
「なら…、次の理梨の願いは?」
涼ちゃんが私の頬にキスをする。
「次の願いは…。」
星に願いを込めるように私はこの先も涼ちゃんに願いを託す。
涼ちゃんが居ない世界なんて想像なんか出来ないのだから…。
fine…。

