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VERTEX
第5章 部外者…

「理梨の為に絶対に負ける訳ないよ。」
自信満々の涼ちゃんが居た。
泣き虫でトロい男の子はもう居ない。
情けない顔で私にしがみつく犬男も居ない。
自信たっぷりの完璧にカッコいい男が私に笑顔を見せて笑っている。
私の瞼にキスをする。
「もう大丈夫だから…。」
涼ちゃんからそう言うから控え室を出た。
会長さんと篠原さんが心配そうに私を見る。
顔が熱くて今の自分がどんな顔をしているのかわからない。
とにかく恥ずかしいから顔を伏せたまま
「涼ちゃんなら、もう落ち着いてますから…。」
とだけ伝える。
「ご苦労様!」
会長さんと篠原さんが私にそう言って控え室に飛び込んだ。
地面に足が着かない気分のまま、ふらふらとして客席に戻ろうとした。
通路を抜けてとにかく客席へ…。
………。
自分が方向音痴だという事実を思い出す。
来た時は篠原さんを追いかけるのに必死でどうやってここに来たのかが、さっぱりわからない。
涼ちゃんの試合が始まるのに…、どうしよう?
似たような通路を何度もウロウロとして似たような扉を開けては違う扉だと思い知らされる。
段々と心細くなって来る。
ジムパスがあるとはいえ私は部外者だから早くこの通路から抜け出さなければならない。
「部外者は立ち入り禁止だぞ。」
知らない男の人の声がした。
「ひっ!?」
身体が強張り恐る恐ると声の方を見る。
私と同じくらいの年頃の男の子がジュースを飲みながら私を見ている。
Tシャツにボクサーパンツ。
選手の1人だとわかる。
「部外者じゃありません。」
篠原さんから預かったジムパスを見せる。
「ジムパス?でも、セコンドでも選手でもないよな?誰かの家族か?」
その男の子が聞いて来る。

