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夢の欠片(くすくす姫サイドストーリー)
第1章 前編

「あの令嬢はどうだ。あの家は格式ばっていないから、お前も息が詰まりにくいと思うぞ。それにお前、尻より胸派だろ?あの娘なら、抱き心地が良さそうだ」
「…放っとけ」
「お気に召さないか?じゃあ、少し年増だがあっちの…おい、どこへ行く」
「散歩だ」
男が仕組まれた相手探しの場から逃げ出そうと歩き出すと、領主の息子から声が掛かりました。
「おーい、脱走するなよー。遠くへ行くなよ、早めに帰って来ーい」
(余計なお世話だ)
男は酒のグラスを片手に、部屋の庭に面した扉から、外に出ました。
(クッソ下らねえ…跡継ぎなんざ、知るかよ)
男は独りごちながら、酒を舐めました。
男自身、先代に貰われた養子です。ですので、無理をして血の繋がった子どもに継がせるよりも、継ぐ適性のある人間を引き取って、跡を取らせれば良いと思っておりました。男は養子に入るまで身寄りが無く独りで生きてきたせいか、一所に縛り付けられるのが、何よりも嫌いだったのです。
憂鬱な気分で残り少ない酒を舐めるように飲んでいると、人声がしました。
誰か何かしているのかと思いましたが、逢引きでしたら邪魔をするのも無粋と言うものです。
そろそろ宴席に戻ろうとした所に、また声が聞こえて来ました。
「…いやっ…やめて、くださいっ」
それは、聞き過ごす訳にはいかない、張り詰めた女性の声でした。
「失礼ですが、どうかなさいまし…」
ただならぬ雰囲気を感じ、グラスを置いて声のした方に歩み寄って様子を窺ってみると、一番最初に目に入ったのは、男性が女性を木の幹に抑えつけて狼藉を働こうとしている様でした。
「何をしている?!」
目が暗さに慣れてよくよく見てみると、男性はかなり酔っており、女性の肩から胸にかけてを無理矢理肌蹴させている所でした。女性の顔は強張って、男性を必死で振り解こうとしています。
「失敬だな、君。邪魔しないでくれたまえ」
「どっちがだ!嫌がってるだろ?!」
男は、薄笑いを浮かべている卑劣な酔漢を押しのけて、震えている女性を庇うように二人の間に割って入りました。
「何の事かな…合意の上だよ?」
「どこが!」
「…いいえ…いいえ、私、合意なんてっ…」
女性は震え声で呟いて、助けを求めるように男の服の背中をきゅっと握りました。
その仕草に含まれている脅えを感じ取った男は、カッとなって目の前の酔漢の胸倉を掴み上げました。
「…放っとけ」
「お気に召さないか?じゃあ、少し年増だがあっちの…おい、どこへ行く」
「散歩だ」
男が仕組まれた相手探しの場から逃げ出そうと歩き出すと、領主の息子から声が掛かりました。
「おーい、脱走するなよー。遠くへ行くなよ、早めに帰って来ーい」
(余計なお世話だ)
男は酒のグラスを片手に、部屋の庭に面した扉から、外に出ました。
(クッソ下らねえ…跡継ぎなんざ、知るかよ)
男は独りごちながら、酒を舐めました。
男自身、先代に貰われた養子です。ですので、無理をして血の繋がった子どもに継がせるよりも、継ぐ適性のある人間を引き取って、跡を取らせれば良いと思っておりました。男は養子に入るまで身寄りが無く独りで生きてきたせいか、一所に縛り付けられるのが、何よりも嫌いだったのです。
憂鬱な気分で残り少ない酒を舐めるように飲んでいると、人声がしました。
誰か何かしているのかと思いましたが、逢引きでしたら邪魔をするのも無粋と言うものです。
そろそろ宴席に戻ろうとした所に、また声が聞こえて来ました。
「…いやっ…やめて、くださいっ」
それは、聞き過ごす訳にはいかない、張り詰めた女性の声でした。
「失礼ですが、どうかなさいまし…」
ただならぬ雰囲気を感じ、グラスを置いて声のした方に歩み寄って様子を窺ってみると、一番最初に目に入ったのは、男性が女性を木の幹に抑えつけて狼藉を働こうとしている様でした。
「何をしている?!」
目が暗さに慣れてよくよく見てみると、男性はかなり酔っており、女性の肩から胸にかけてを無理矢理肌蹴させている所でした。女性の顔は強張って、男性を必死で振り解こうとしています。
「失敬だな、君。邪魔しないでくれたまえ」
「どっちがだ!嫌がってるだろ?!」
男は、薄笑いを浮かべている卑劣な酔漢を押しのけて、震えている女性を庇うように二人の間に割って入りました。
「何の事かな…合意の上だよ?」
「どこが!」
「…いいえ…いいえ、私、合意なんてっ…」
女性は震え声で呟いて、助けを求めるように男の服の背中をきゅっと握りました。
その仕草に含まれている脅えを感じ取った男は、カッとなって目の前の酔漢の胸倉を掴み上げました。

