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姫巫女さまの夜伽噺
第7章 癇癪鼠
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「起きろ」
無愛想な声がして
気がつけば
伊良は自分が寝ていることに気づいた。
障子から漏れる光は強い月の光。
見れば
播磨は逝き疲れてだらしない格好で寝ていた。
身体中から
播磨の匂いがするかのようで
伊良は一気に目が覚めた。
「風呂行くぞ」
「このままでいいの?」
「あとは式がやる。黙ってろ」
そう言って着物にくるまれて抱きかかえられ
志摩の鼓動に安堵して伊良は涙が出た。
志摩にもっと抱きつきたいのだが
全身に播磨の体液がこびりついているため
それもできずにただただ、体を縮こまらせた。
そうこうしているうちに湯殿に着く。
志摩は着物も脱がずに
そのまま湯船へとザバザバと入り
中央で立ち止まると
そこにしゃがみ込んだ。
「愛蘭…良くできた」
志摩のその声にたまらず
伊良は彼の首筋に手を回して抱きついた。
彼女を抱きとめると
志摩は優しく湯を伊良の背中にかける。
「上出来だ…」
「志摩…っ!」
懐かしいとさえ思うほど
彼の首筋から香る彼の匂いに安堵する。
それほどまでに志摩に抱かれ
そして、播磨との夜は長かった。
志摩がふと伊良の首筋に牙を立て
その隙間からざらついた舌を覗かせると
優しく舌で首を愛撫する。
抱きしめた手の一本が
伊良の頭上に伸びると
そこにあった耳に優しく触れた。
「あっ…」
くすぐったいような感覚に耳を動かすと
志摩の指が追ってきて
耳をつまんだり中に手を入れたりする。
「や、志摩…なんか変な感覚…」
「分かったか、耳を触られる感覚がどんなもんだか」
志摩は意地悪に口づけを繰り返しながら伊良の耳を触った。
その優しい触られ方に
恥ずかしさと心地よさが混じる。