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姫巫女さまの夜伽噺
第9章 穂高と志摩
蝓凪様の回春がうまくいったという噂で
宿中が持ちきりになったのは
その翌日のことだった。


駆けつけてきた双子は
伊良にじゃれ付くように飛びつくと
頬ずりしながらまるで自分のことのように喜んだ。


「伊良様、すごいです、素敵です」


「宿中がこの話題で持ちきりなの」


二人は宿で働くみんなの声や
宿泊している神様たちの声を聞かせてくれた。


そんな大それたことをした覚えは全くなく
伊良は逆にそれほどまでに持ち上げられると
小っ恥ずかしくなってしまって
黙りこくって頬を赤らめるしかなかった。


「でも、私何もしてないもん…」


「そんなことありません!」


ぴしゃりと近江に言われて
思わず伊良は姿勢を正す。


「伊良様にしか、できないお仕事でした。
なぜなら、今まで数多くの妖怪や神が
幾度となく蝓凪様を奮い立たせようと試みました。
ですが、どうにもできなかったんです。
蝓凪様ご本人でさえ
老いと寿命を感じつつありました。


しかし、どうですか!
伊良様のその魅力的なお体と姫巫女のお役目によって
見事、蝓凪様は復活され、今では時の人となっています!」
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