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竜を継ぐ者~黄の刻印の章~(世界はエッチと愛で救われる)
第12章 いつもと少し違う朝の日常
「あんたお弁当忘れて行ったから……」
こうやって見ると本当に対照的だと真吾は思った。
並んでいるのを見ていれば、確かに血の繋がりを感じる程にそっくりではある。だが雰囲気が赤の他人だ。
美人で淑やかでスタイルも良くて、ご近所の男性陣にも人気がある千鶴子に、憧れを仄かに懐いた経験は真吾にもあった。
弁当を無事手渡した千鶴子を見送りながら、何の気なしに呟いた。
「女らしさが遺伝しなくて残念だったな?」
その瞬間、重たい音と共に腹に鈍い衝撃が走る。千佳が女の子らしく見えない最大の理由――それは乱暴ですぐ手がでる所だと思う……。
「ごふ……ッ」
「男みたいで悪かったねぇッ!」
真吾の鳩尾に千佳の拳がクリーンヒットしている。
ヨロリとよろめくと千佳の肩に手を掛けた。
――が、その瞬間。真吾の脳裏にフッと映像が過ぎった。
小学生の――低学年くらいだろうか。
背中に届くくらいの長さの黒髪を、美里のようにサイドを編みこみにしたヘアスタイル――後姿なので顔は良く見えない。
季節は夏なのか、少女は萌黄のキャミソールワンピースを着ている。
少女の小さな手は、浅黒い骨ばった手に繋がれていた。
前をずっと向いて歩いていた頭がフッと横を向き、少女の顔が見えた。
顔に見覚えがある。あれは――。
「真ちゃんってば!」
自分を呼ぶ声で我に返った。
気づくと千佳の肩に頬を着けているらしく、ぼんやりとした視界に健康的な小麦色の首筋が見えた。視線を上げていくと眉を顰めた、怒って良いのか困って良いのか迷っている千佳の顔。
「千佳…………」
萌黄ワンピのあの子は――千佳だ。
小学校2年以前の記憶はだいぶ怪しいが、記憶に残っている千佳の姿は少年と見まごう逞しい姿ばかりだ。
ただ、あの姿に真吾は朧げながら見覚えがあった。
ワンピース姿の千佳は、小学校2年の頃の――確か夏休み。それ以上の記憶はないが、千佳もあんな女の子らしい姿をしていた頃もあったんだな。
懐旧の情に思わず口角を緩ませる真吾だったが不図、奇妙に感じた。
今まで思い出しもしなかったのに、どうして突然まるで白昼夢みたいに懐古風景が脳裏に浮かんだのだろう?
「もー!真ちゃん重たいんだよ。いつまで寄り掛かってんのさ!」
焦れたような千佳の声が耳元でグワンと響いて、真吾はビクリと驚いた。
こうやって見ると本当に対照的だと真吾は思った。
並んでいるのを見ていれば、確かに血の繋がりを感じる程にそっくりではある。だが雰囲気が赤の他人だ。
美人で淑やかでスタイルも良くて、ご近所の男性陣にも人気がある千鶴子に、憧れを仄かに懐いた経験は真吾にもあった。
弁当を無事手渡した千鶴子を見送りながら、何の気なしに呟いた。
「女らしさが遺伝しなくて残念だったな?」
その瞬間、重たい音と共に腹に鈍い衝撃が走る。千佳が女の子らしく見えない最大の理由――それは乱暴ですぐ手がでる所だと思う……。
「ごふ……ッ」
「男みたいで悪かったねぇッ!」
真吾の鳩尾に千佳の拳がクリーンヒットしている。
ヨロリとよろめくと千佳の肩に手を掛けた。
――が、その瞬間。真吾の脳裏にフッと映像が過ぎった。
小学生の――低学年くらいだろうか。
背中に届くくらいの長さの黒髪を、美里のようにサイドを編みこみにしたヘアスタイル――後姿なので顔は良く見えない。
季節は夏なのか、少女は萌黄のキャミソールワンピースを着ている。
少女の小さな手は、浅黒い骨ばった手に繋がれていた。
前をずっと向いて歩いていた頭がフッと横を向き、少女の顔が見えた。
顔に見覚えがある。あれは――。
「真ちゃんってば!」
自分を呼ぶ声で我に返った。
気づくと千佳の肩に頬を着けているらしく、ぼんやりとした視界に健康的な小麦色の首筋が見えた。視線を上げていくと眉を顰めた、怒って良いのか困って良いのか迷っている千佳の顔。
「千佳…………」
萌黄ワンピのあの子は――千佳だ。
小学校2年以前の記憶はだいぶ怪しいが、記憶に残っている千佳の姿は少年と見まごう逞しい姿ばかりだ。
ただ、あの姿に真吾は朧げながら見覚えがあった。
ワンピース姿の千佳は、小学校2年の頃の――確か夏休み。それ以上の記憶はないが、千佳もあんな女の子らしい姿をしていた頃もあったんだな。
懐旧の情に思わず口角を緩ませる真吾だったが不図、奇妙に感じた。
今まで思い出しもしなかったのに、どうして突然まるで白昼夢みたいに懐古風景が脳裏に浮かんだのだろう?
「もー!真ちゃん重たいんだよ。いつまで寄り掛かってんのさ!」
焦れたような千佳の声が耳元でグワンと響いて、真吾はビクリと驚いた。