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身代わりの夜
第14章 熱愛目出し帽
 ノックの音にドアを開けると、亜沙子を押しのけるように男が入ってきた。

「きゃっ……な、なに?」

 二、三歩、後ずさる。

 男はワイシャツとズボンに、黒いニットのフェイスマスクをかぶっていた。
 俗に目出し帽というやつだ。

 ふたつの楕円形の穴がV字型に吊り上がり、そこからのぞく血走った瞳が、ぎろりと亜沙子の方を向いた。

「……山野辺くんよね」

 声が震えそうになるのを何とかこらえた。

 男は無言で亜沙子の手首を掴み、ベッドの前へと引きずっていく。
 投げ出された。
 身体がシーツの上でバウンドする。

 亜沙子はホテル備えつけの部屋着になっていた。
 甚兵衛タイプのものだ。
 ミニスカートほどしかない裾がめくれて、量感のある太腿があらわになった。

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