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身代わりの夜
第1章 憧れ美人上司
 しかし、亜沙子の方針や指示は、一見無謀だったり細かすぎたりするように見えるが、その実、適格だった。
 他の仲間がうんざりした顔を見せる中で、啓太だけは秘かに尊敬していた。

 今も開発部からまわってきた製品の改良計画を、おそるべきスピードで読み進んでいる。
 ときどき首をひねったり、ペン先で書類をつついたりするのは、気に入らない内容でもあったのだろうか。

 こうして亜沙子が仕事に取り組む時の真剣な表情が、啓太はたまらなく好きだった。

「山野辺くん。プレスリリース用の会場の手配は大丈夫よね」

 課長に呼ばれ、山野辺が余裕の笑みで立ち上がる。

「はい。すべて終わっています。あと、これが過去のユーザー傾向のまとめです」

「あら、はやい」

 亜沙子は書類にすばやく目を通しながら、ご満悦だ。

「さすがね。山野辺くんに任せとけば、仕事がはやいわ」

 と輝くような笑みをあたえた。
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